19世紀末のフランス作家マルセル・シュオッブ(Marcel Schwob)の「モネルの書」の翻訳とその周辺


by sbiaco

モネル断章 - マリオ・プラーツ

『ロマンチック・アゴニー』の「ビザンチウム」の章より抜粋

 『モネルの書』において、シュオッブは、短い寓話のかたちで、「エゴイズムや、官能や、残虐さや、高慢さや、忍耐や、憐憫などにさいなまれる」少女たちの肖像を描いている。彼女らはモネルの妹たち、唯一無二のモネルのさまざまな化身である。シュオッブはモネルのうちに、亡くした恋人のイメージを、理想の娼婦の象徴的形象の域にまで高めた──それはデカダンスのベアトリーチェであり、彼が取り憑かれていた小さい娼婦という主題を崇高化したものとさえいえるだろう。彼が憂鬱な、しばしば倒錯した明りで照らし出す少女たちの肖像(たとえば「官能的な娘」や「よこしまな娘」など)の中から、ここでは「冷ややかな娘」に言及しておこう、というのも、それがデカダン派の作家たちに特徴的な主題、すなわちサロメの主題を扱っているからだ。
 この寓話で、モルガーヌ姫は「本物の鏡」を求めて「東邦」の遠い国へ行き、おぞましい慣習(フロベールの「聖アントワーヌの誘惑」のいくつかの描写を彷彿させる)をもつ人々の住む国々を経て、その昔「ある残酷な女王の居館であった」旅籠に到着する。この女王というのは、話の中では名指されていないが、まさにサロメその人である。そして首をはねられた聖者の血がまだ一杯に満ちている銅の盆に自分の姿を映してみるや、彼女はたちまち血に餓えた淫婦と化すのである、それまではずっと「冷ややかな娘」で通してきたというのに。
 「モルガーヌ姫がその血の鏡の中に何を見たかはだれも知らない。しかし旅の帰途、彼女の騾馬曳たちは、輿のなかへ引きこまれたあと、毎晩一人づつ殺されていった、いずれも喉を割られ、土色になった顔を虚空へ向けた姿で。人々はいつしかこの姫のことを「赤のモルガーヌ」と呼ぶようになったが、まことに彼女こそは悪名高い娼婦にして恐るべき殺戮者であった」
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by sbiaco | 2010-01-28 22:27 | 附録